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狂都 第二章 少女

 第二章 少女

 少女は少年と逢瀬を重ねていた。中学校の同級生だった少年とは、中学校を卒業した半年後から交際を始めていた。それは、誰にも知られていない関係だった。
 少女が身を寄せる置屋は、恋愛を禁じるような古めかしい場所ではなかった。秘密は、悪戯半分に保たれた刺激だった。その刺激は、恋を一層と甘美なものにした。
 十六歳の誕生日、少女は処女ではなくなった。平日の昼食時に少年の自宅に押しかけ、冬休みで暇を持て余していた少年と本能任せの情事に至ったのだ。事は手早く済み、少女が午後からの稽古に遅刻することはなかった。
 少女が所属する置屋では、少女を含め三人の芸妓志望が住み込みで共同生活を送っていた。三人の中で、少女が最も容姿に恵まれていた。それを羨ましがられることはあっても、妬まれることはなかった。三人の仲は良かった。置屋の女将にも気に入られ、少女に人間関係の悩みは皆無だった。
 舞妓として初めて客の相手をしたのは、中学校を卒業した一年後のことだった。地元の名士である初老の男とその連れ三人を相手に舞を披露し、投扇興の対戦相手を務めたりしたのだった。新鮮な体験が、少女の記憶に男たちを強く留めた。後日、地元の名士である初老の男の鯰みたいな顔を、少女は何度も愛でるように思い出した。
 新鮮さは、必然として、繰り返すことで失われた。客の顔と名を覚えることはあっても、当人のいないところで思い出すような愛着を持つことは二度となかった。
 中村は、舞妓としての少女の記憶には留まったが、一人の人間としての少女の記憶には留まらなかった。